宏子と歌舞伎
宏子と歌舞伎
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日本橋公会堂で開かれた妻の舞踊発表を、英子さんと宏子さんと3人で抜け出した。草臥れていたことと、歌舞伎座まではさほど遠くないとタクシーに乗り込んだ。タクシーに乗ったとたんに空腹を覚えた。考えてみると今日はまだ昼飯を食べてはいなかった。東銀座で車を降りると「まだ15分ありますから、そこの串揚げでも食べましょうか」と英子が気遣ってくれた。
いずれにしても幕間までは我慢できないだろうと、歌舞伎座地下にある「豆大福」を買った。そこで宏子がいなくなったので英子に聞くと、なんとじじいの好物である名古屋の「地雷也天むす弁当」を買いに行ったという。なんとじじいは年甲斐もなく、席に着くなり豆大福にかぶり付いた。それを見かねて宏子が、ペットボトルの栓を抜いてじじいに持たせてくれるのであった。
今夜は「〇〇会新年会幹事を無事に務めた宏子さん慰労のための芝居見物(第3弾)の日」であった。じじいが大福を食い終わると吉右衛門丈の「熊谷陣屋」の幕があがった。ところが不覚にも腹の満ちたじじいは、睡魔に襲われてこっくりこっくりと居眠りであった。幕間の「天むす弁当」を食べると、春を寿ぐ曽我狂言の舞踊「當年祝春駒」もまたまた夢うつつであった。
それに気づいたかどうかは定かでないが、宏子が「わたし今夜が初玉三郎なんです」と身を乗り出して幕の上がるのを待っている。深川芸者美代吉を玉三郎丈、そして船頭三次を仁左衛門丈が演ずる「名月八幡祭」の幕が上がると、なんとじじいもばっちりと目が覚めた。それに池田大伍作の作品を、甥の民俗学者の池田弥三郎が演出するところにも興味があった。
歌舞伎が跳ねて東銀座での別れ際に宏子が「今日はバレンタインデーですよ」とジジイに紙袋を手渡してくれた。なんとあったかそうなRalph Laurenのマフラーが入っていた。ありがとう。これでこの冬も乗り切れそうである。
日本舞踊に歌舞伎、優雅でぬくもりのある暮らしぶりに拍手!
by mwainfo (2019-02-28 11:47)