「箱根駅伝と壽初春大歌舞伎」 [令和6年 (2024)]
「箱根駅伝と壽初春大歌舞伎」
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あけましておめでとうございます。
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正月3日、まだ箱根駅伝の復路走者は平塚辺りだろう。それなのにじじいは、藤沢駅に向かって歩き出した。わが家は駅から徒歩7分だから、毎年箱根駅伝の2日間だけは、遊行寺までの沿道は歩くことも侭ならないほどの混雑ぶりである。
藤沢駅に向かうじじいとは逆方向に、この日のために年に1度押し入れからでも引っ張り出したのだろうか、母校のマーク入りのスポーツウエアーを着込んだ人たちが、両手に差し入れのジュースなどをぶら下げて道を急いでいる。
元々じじいは、箱根駅伝を観戦するために藤沢の地に引っ越して来たはずであった。なのに今日のじじいは、箱根駅伝とは反対方向に向かって急いでいる。今年は久しぶりに母校が箱根駅伝に戻って来たというのに、その箱根駅伝に後ろ髪を引かれながらも歌舞伎座に向かって急いでいる。
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初春を寿ぐ「五人三番叟」(當辰歳歌舞伎賑)で歌舞伎座の幕は開いた。若き5人の激しい舞を観ていると、まるでEXILEのステージを観ているのかのような錯覚させられた。もしかしたら、ここらにも「新しい歌舞伎への挑戦があるのだろうか」と辰年の生まれのじじいもニンマリした。続く「赤穂義士外伝の内 荒川十太夫」は、幕が上がると切腹の場面だった。正月に切腹は如何かと思ったが、やがてじじいは「武士の生きざまの素晴らしさ」に思わず目頭を熱くしていた。
三作目の外題は「江戸みやげ 狐狸狐狸ばなし」だったが、この北条秀樹作の「男女間のやり取りのリアルさ」にいささか戸惑った。しかし、喜劇仕立ての騙し合いと、客席の笑いとが溶け合って、もうすっかり歌舞伎となっていた。箱根駅伝はすっかり忘れて、躍動感あふれる五人三番叟、つづく堀部安兵衛の介錯人荒川十太夫の苦悩と覚悟、最後は正月らしく喜劇の狐狸狐狸ばなしで大笑いした。
このまま今年1年も大笑いで過ごしてぇもんだぜぇ~。