「夜の歌舞伎座」 [令和6年 (2024)]
「夜の歌舞伎座」
~~~~~~~~~~~~~~
-
16日の昼の歌舞伎座はなんとか楽しめた。芝居もだが、東海道線に乗って地下道の階段を上がったり下ったりして、なんとか歌舞伎座に辿り着けたことが嬉しかった。
午後の東海道線上りは空いていた。自称晴れ男を気取っているが、このままだと天気もなんとか持ちそうだ。車中の人たちは本を読んでいたり、スマホから目を離さないでいたりして長閑である。こんな時にも世界のあちこちでは争いが絶えないのに、ここだけ平和でいいのかとちょっとだけ気になっていた。
今夜の出し物は、四世鶴屋南北作の悪婆お六と強悪喜兵衛夫婦の悪の華「於染久松色読販 土手のお六・鬼門の喜兵衛」と、これも玉三郎と仁左衛門の清元舞踊「神田祭」と、歌人九條武子の遺作からという舞踊「四季 春紙雛・夏魂まつり・秋砧・冬木枯」であった。
木挽町広場のエスカレーターから下りてきた有希子さんに、じじいの方から声を掛ける。弾けそうな笑顔で近寄ったゆっこが、よたよた歩くじじいの腕を取ってくれる。照れくさいのだが、いくつになってもじじいは教え子が、こんな風にやさしくしてくれると周りの目を気にしながらも嬉しくなるのである。
幕間弁当を食べながらも、ゆっこは仏頂面のじじいの写真を撮っている。幕間を待ってました言わんばかりに、話題はあっちこっちと飛び火した。なんと玉三郎の舞踊になると、ゆっこは三味線の音に合わせて彼女の手も微妙に動いている。三味線稽古の話しから、突然彼女は「新国立劇場主催公演「テーバイの舞台に招待しますので、ぜひ来てください」と誘ってくれた。
帰り際にゆっこが「モーリーが、妻を歌舞伎町(どうやら歌舞伎座と歌舞伎町と勘違いか)に誘ってくださりありがとうございましたと言ってました」と笑いをこらえながら語るのであった。そして主夫であり家事担当のじじいへの気遣いから「これは味噌屋蔵椀の味噌汁で美味しいんですよ」と手渡してくださる。