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私あずきと申します。1 [あずきの独り言]




  私あずきと申します。 1                      
                      
                     
 
平成22年4月13日(火)

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  • いつもなら私の主人が、私の気持ちなんてまったく無視して、私のことをあれこれと勝手に書いていたのです。

    それも「愛犬チワワ」などと、私の本名を伏せて書いていたのです。でも私には、「あずき」というれっきとした名前があるのです。 

    最近では珍しくもなくなりましたが、「この犬のお名前は・・・」と散歩の時などによく聞かれたものでした。そんな時に主人は、「あずきと申します」と答えるのですが、大概の人は「え、あずきちゃんですか」と驚くことが多かったものでした。

    でも、ここでい
    う主人とは私の旦那ではなくて、私の飼い主のことなんです。わが家は、この主人とその奥さんと娘さん、それと私の3人と一匹の家族です。 

    それにしても昨日は寒かったのに、今日はなんと初夏のような暖かさなのです。

    暑いです。

        P1100831.jpg

    ここは葉山のヨットハーバー近くにある防潮堤です。

    あまり散歩が好きではない私のために、年に何度か主人夫妻が連れて来てくれる場所でもあるのです。
    この赤いヨット風のモニュメントの向こうに、島のように丸く見えているのは小坪の披露山公園あたりです。

    左に目を向けますと、稲村ヶ崎や江の島が見えます。

        P1100840.jpg

    あゝ欠伸が出そうになる。

    「あずき」という名前の由来を話していたはずなのに、いつの間にかその話から脱線しそうになりました。これというのも7年もお付き合いしている主人の脱線癖が、どうしても一緒に暮らしていると私にも伝染してしまうからです。

    次の機会にでも写真をお見せしようかと思いますが、私がこの家に引っ越して来た時には、まだシッポには毛がなくて、顔も今よりは黒毛の部分が多かったものですから、まるでネズミのようでした。

    その頃、外を散歩していた時などに、小さい子たちに会うと「ワァー小さい、まるでネズミみたい」とよく言われたものでした。

    自分で言うのもなんですが、あのディズニーランドのミッキーマウスのような風貌でしたから、わが家の娘さんは「ミッキー」と名づけようとしたのでした。私もネズミでは嫌でありましたが、あの「ミッキー」なら満更でもないと思っていました。

    ところが娘さんが会社に出かけた後で、主人と奥さんが私の名前のことであれこれと話をはじめたのです。

    この家の主人は少し変わった人で、やさしくって面白いから外面はよいのですが、家ではだらしがなくて頑固で、一端言い出したら人の言うことなどは絶対に聞かないという嫌われ者です。

    それでも私のことになると小さい目をさらに小さくして、「お前は十勝おはぎが好きだから、十勝という名前にしようか・・・」と奥さんに相談をはじめたのです。

    すると奥さんは、「いくらなんでも、十勝はないでしょう。娘はミッキーにすると言ってましたよ」と笑顔も見せずに反対してくれたのです。

    私はほっとしていましたが、それでも諦めない主人は、「それなら、おはぎにしようか・・・」と次の案を言い出したのです。それを聞いた奥さんは、もう聞こえないふりをして返事もしなかったのです。

    この話はもうこれで終わりになって、おそらくミッキーに決まるだろうと私は安堵していました。

    ところが、しばらくして主人は「それならあずきにしようか・・・」と3案目を出して来たのです。おらく今度も奥さんは、一蹴するだろうと期待していました。

    ところがなんとしたことでしょうか、「あずきね・・・、面白いかも・・・」と奥さんが同調したのです。

    この会話を新しいハウスの中で聞いていた私は、「あずきですって・・・、私はミッキーの方がいいのに・・・」と愕然としたものでした。しかし、この家はすべての権限が奥さんに握られているのです。その奥さんの許可が出たからには、もうミッキーに戻ることはないであろうと、悲しいけれども諦めざるをえませんでした。

    その日から私は、「あずき」と呼ばれるようになったのです。

        P1100832.jpg

    ところで先ほど、「この家に来てから7年」と言いましたけれども、私の誕生日は2003年2月18日です。

    それと先ほど、奥さんが命名の許可をしたことで、私の名前が「あずき」に決まったとも言いましたが、実はジャパン・ケンネル・クラブの発行する「国際公認血統証明書」に記載されている名前は、「ASTREA OF SHINING YUKO JP(アストリーア・オブ・シヤイニング・ユーコ・ジェイピー)なのです。

    ですから、この家で命名してくれた「あずき」という名前は、本名というよりも通称といった方が正しいのかも知れません。だからといって、この家でつけてもらった「あずき」という名前が嫌いだと言っているわけではありません。

    いずれにしても、これからこの家で可愛がってもらうためには、この「あずき」で生きてゆかねばならないのです。

    もう一つお話ししておきますと、私がこの家に来たのは5月25日だったと思います。実はそのあたりの予防接種などの記録は何枚も残されているのですが、この家に来たという確かな日付のある記録は、まだ見つかってはいないのです。

    それでも、「5月25日だった」と言い切ることができますのは、やはり奥さんがそう仰るからなのです。

         ・  ・  ・  ・  ・

    私がこの家に来ることになったのにも、一つのドラマがあったのです。

    このことはすでに話したかどうか忘れましたが、私には弟がいたのです。その弟は人見知りすることもなく、陽気で人懐っこいものですから、すぐに気に入られて新しいお家に引き取られて行きました。

    ところが私は臆病で、もし人に抱き上げられようとでもした時には、ブルブルふるえてしまって気もそぞろになるのです。

    しかし、弟は人が訪れるとケージの中をグルグル走り回って、甘えるような鳴き声を出して、私はここにいますと自分の存在をアピールできるのです。ところが私は、人が傍に来るとケージの隅に丸まってしまうような性格ですから、だんだん店の奥の方に場所を移動させられたのです。

    弟が引き取られることになった日のことでしたが、突然母親と娘さんの2人が店に入ってきました。弟は、いつものように甘えた声を出して、自分の存在を主張しています。その親娘は、早速店員さんに弟をケージから出してもらって、抱き上げて頬ずりしていました。

    店員は、気の毒そうな顔をしてしばらく親娘を見ていたが、「この子はもう決まりました」と話しかけています。

    これは7年前のことでしたが、その頃テレビのコマーシャルに出演していた、白いチワワが大評判になっていましたので、私たちの仲間たちは凄い人気でした。

    その時私は、後から考えてみても不思議なことなのですが、諦め切れずに弟をケージに戻している親娘に向かって、「ワン、ワン」と声をかけてみたのです。

    するとその声に気づいた親娘は、店の1番奥にある私のケージに近づいて、私をケージから出すように店員にお願いしたのでした。

    私は、自分から親娘に声をかけたのにもかかわらず、娘さんに抱き上げられると、いつものようにブルブル身体がふるえるのを堪えることができませんでした。でもどうしたことか、これも不思議なのですが、この親娘に精一杯の愛想を振りまこうとするもう一人の自分がいたのです。

    自分でもとても信じられない行動でしたが、こんな私を見たことがなかった店員さんは、もっと驚いたようでした。

    「あれ・・・、この子が鳴いたわ・・・。この子はとっても美人さんなのですが、食事がほそくて人見知りなんです。どうしたんでしょう。今日初めて私はこの子の声を聞きました。今までズッーと、この子は声が出ないのかと思っていました」と、信じられないという顔をしていたのです。

    それでも、日ごろの私のことをよく知っている店員さんは、私をこの親娘に強く勧めようとはしませんでした。

    しばらく私を抱っこしていた親娘は、やがて「明日、もう一度来てみます」と私をケージに戻しました。なんども振り返えりながら店から出てゆく親娘に、私は思わずもう一度「ワン、ワン」と声をかけていました。

    これは後で聞いた話ですが、親娘が最初に店に来た時に私の鳴く声を聞いて、「私を連れてって・・・」と聞こえたような気がしたというのです。そして親娘の帰り際に、もう一度鳴いた声が、まるで「私待っています」と聞こえたような気がしたというのです。

         ・  ・  ・  ・  ・

    翌日の午後のことでした。

    昨日は親娘で来たのでしたが、今日は奥さんが男の人と一緒に店に入って来ました。奥さんは店に入って来るなり、他の仲間たちに目をやることもなく、
    真直ぐに私のケージの前に立ちました。

    私もなにがなんだか分からなかったのですが、なぜか嬉しくなって「ワン、ワン、ワン」と大声を出していました。

    奥さんは、「ほら、この子よ」と男の人に語りかけています。
    「かわいいでしょ。ほとんど鳴いたことがなかった子なのに、昨日娘と来た時に大声で鳴いたのよ。今も鳴いたでしょ。不思議なのよ。なにかこの子に運命的なものを感じるのよ。」と話しながら、もう店員を呼んでいるのです。

    どうやら奥さんは、昨日の内に、娘さんと私を引き取ることの約束ができていたようでした。ですから日曜日にもかかわらず、強引にご主人を連れ出して、私を引き取ることを事後承諾させようとしたらしいのです。

    ケージから出された私を、そっと抱き上げた主人も、満更でもない顔をしていたから、私のことを気に入ってくれたらしいのです。

    決まると早いのがこの家の家風らしいのです。主人の返事を待つまでもなく、奥さんはもう慌しく私の引越しの準備に入りました。

    夫妻が店に来てから2時間もすると、すべての手続きと日常生活に必要なものを買い込んで、主人の運転する車に乗り込んだのです。

    突然降って沸いたような有様でしたが、いろいろなことを考えていました。

    「もし、この家に引き取ってもらえなかったら、今後の私はどうなっていたか分かりません。鳴き声も出さずに人見知りをするし、食も細い私の運命はすでに決まっていたことでしょう。

    なんとなく、そんなことを感じていた私は、弟が引越しをする日になって初めて自分を鼓舞し、精一杯に自分を表現してみようと決意してみたのです。その成果とはいえないまでも、この家族との運命的な出会があって、なんとかこの家に引き取られたのです。

    だが、この不思議な出会いと幸せの中にあっても、全身のふるえがおさまらないのです。奥さんは私が寒いのかと勘違いして、もう5月も末なのに、厚手の洋服を着せてくれました。私もその気遣いに応えようと、なんとか身体に力を入れて堪えてみましたが、そうしたことで一層ブルブルとふるえてしまうのです。

    奥さんは食事も水も用意してくれたのですが、とても食欲なんてありません。

    「この子、食が細いんですって・・・」という声が聞こえてきました。なんとか気持ちを奮い立たせようと頑張るのですが、どうにも身体が受けつけないのです。


         ・  ・  ・  ・  ・

    これも後から聞いた話ですが、この家に飼われていた先代のポメラニアンのポーちゃんも、この家に来た日に、これとよく似た話があったと聞いたことがあります。


    (これからどんなお話しに発展するのか、この私にも分かりません。)


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