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仏像を彫る【一話】  [仏像彫刻]

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  仏像を彫る
  
      
微笑みに逢いたくて 【一話】    

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  •  昨年(2006年)の7月から、仏像彫刻を再開しました。

     なぜ仏像を彫るのかと考えたことがありました。しかし、適当な答えが見つかりませんでした。人にも聞かれたことがありましたが、うまく説明することができませんでした。
     仏像教室の仲間に聞いてみたことがありましたが、その人はある著名な登山家の「そこに山があるから」という名台詞をもじって、「仏像彫りが好きだから」と茶化されてしまいました。

     8月に私の所属する仏像教室の代表者から、展示会場用の挨拶文を書いてほしいとの依頼がありました。
     そこで前回の挨拶文を参考にさせてもらって、一応もっともらしく仕上げて提出しました。いつもでしたらそのまま忘れてしまう程度のことですが、どうしたことか今回に限って、その提出した挨拶文が気になって仕方がないのです。

     あまり気になるので、パソコンに保存してあった下書きを引き出して読み直してみたのです。
     ところが何度読んでも自分の文章ではないようなまるで借り物のような気分がするのです。そこであれこれ推敲して、文章の流れを変えてみたり言葉を入れ替えてみたりしたのですが、依然としてすっきりしない物足りなさを感ずるのです。

     それは難しく考えるほどのことではなかったのです。

     いままでの私はなんとなく仏像を彫っているだけで満足でしたから、ことさら理由づけをする必要なんてなかったのです。
     そんな私でも知人・友人の作品を見に行ったり、批評しあったりすることはありました。時には仏像の展覧会があると上野あたりまで出かけることもありました。

     しかし、それは美術作品としての仏像を鑑賞することの楽しみであったり、信仰の対象としての仏像への興味だったりでありました。
     だがそこから先というか、そこから奥といったらよいかどうか分かりませんが仏像についてのさまざまな側面について、それ以上深く考えようとしたことなどはありませんでした。

     たまたま手元にあった仏像に関する本のページを繰って、あまりに仏像に対する知識のなさに気づいて恥ずかしく思ったり、新しい発見に出会って教えられたりすることもありました。
     しかし、だからといって仏像の専門書を読み漁ろうなんていう気持ちはありませんでした。その後も何冊か買い求めた本も、机の隅に「積ん読」礼讃のままとなっています。
     
     ですから、「なぜ仏像を彫るようになったのか」と友人や知人に聞かれた時には、「なにか嫌なことがあったとしても、仏像を彫っている時だけでも無心になれるからです」と答えることにしていました。
     それは仏像などを彫ったことのない人にとっては、この種の体験的な話し方のほうが、彫ろうとする者の動機をみたいなものを理解してもらえそうな気がしたからです。

     またある時には「自然木の中に、仏さまのお姿が見えたように感じましたので、その仏さまをお迎えしました」と気障な言葉で平然として語った記憶もあります。
     この話は私の体験談ではありませんで、先輩からお聞きした言葉の受け売りに過ぎなかったのです。
     
     秋の仏像展示会の案内状に、「朽ちて、捨てられ、あとは燃やされるのを待つばかりの雑木にも、愛おしさを感じられる齢となりまして、昨年の7月から仏像彫りを再開しました」と少し謙虚さを含ませて書いてみました。

     しかし、当日の会場で改めて自作を見直して、その完成度の低さに恥ずかしくなりました。謙虚さも程ほどにしておかないと、それこそ恥の上塗りになってしまうものだと穴があったら入りたい気分になりました。

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    (註)

     この「仏像を彫る」は、いままでいろいろと質問くださった友人への返事のつもりで書きはじめています。

     この文章によって皆さまに理解していただけるような回答が出ることはありませんが、「つれづれの記」の一環としてしばらくは退屈しのぎに、まだ自分でも見たことのない世界をチョッとだけ覗いてみたいと思っています。

 


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