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湘南にも秋の風 【完】     [湘南にも秋の風]

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  湘南にも秋の風  
鵠沼海岸コースの⑧ (最終回)

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  •  やがて右側に岩屋不動入口の石柱が見えてきました。ここは石籠山不動尊の名前が示すがごとく、弘法大師が穴居修行したと伝えられている場所です。

     現在は先ほど通過した泉藏寺の別当となっていますが、もともとは片瀬出身の快祐上人が鎌倉の青蓮寺で修行した後に、この地に寺を開いたものと伝えられています。その快祐上人は、この地で入定(即身成仏)されたとも伝えられているのです。

     昨年から、この街道を何度も通っています。その度に、この岩屋不動入口の石柱の傷と汚れが気になっていました。
     この石柱はそれほど古いものでもないのに角が欠けており、おまけに心ない者の仕業であろうかペンキのようなもので汚されていたからです。
     しかし今日は、その石柱が新しいものに代わっていたのです。こんなところにも、この土地の人々の厚い信心が垣間見えるのです。

     その先に、いよいよ境川(片瀬川)に架かる新屋敷橋が見えてきます。
     
     その橋の右角にはパイニーというパン屋さんがありまして、好物の「あずき抹茶パン」が売られています。
     ここ数年のクリスマスの日には、予約しておいたクリスマスセットを受け取りに来るのは私の仕事になっています。

     パン屋だけではなく、この店のレストランもなかなかの評判なのです。ここの料理は安くて美味しいのですが、それだけではありません。
     この店で製造している様々なパンが食べ放題となっていることが嬉しいのです。時には著名な方々も食事をしていますが、誰が食事をしていても、気づいても気づいていない顔をしているのがこの店の魅力なのです。

     でも今日は愛犬チワワと一緒ですから、妻の好きな「胡桃のパン」を買うことができません。

     今日の「鵠沼海岸コース」もここまで来ますと、後は境川沿いを上流に辿るだけとなります。
     そこで妻に、「もうすぐ着くぞ」と連絡を入れたのです。それは愛犬チワワのお風呂の準備をするようにとの連絡電話だったのです。

     電話を済ませて自転車のペダルを強く踏み込んだのですが、目の前にある「馬喰橋」とある案内板が目に留まり思わず急ブレーキをかけました。
     愛犬のチワワは、驚いて振り返り「どうしたんだい」という表情をしています。
     
     それは、このなんとも愉快な「馬喰橋」の名前に前々から興味があったからです。

     「新編相模国風土記稿」という書物の中には、「源頼朝が片瀬川に馬の鞍を架けて橋の替わりにしたことから馬鞍端となった」ことが橋の名前になったとか、「昔、馬がこの橋にさしかかるといななき突然死んでしまうことから馬殺橋とも呼ばれていた」と表記したとか、「ある時に行者聖が橋の石を取り替えてから災難がなくなった」との伝説から、この橋名がつけられたなどと書かれているようです。
      また、この他にも文化5年(1808)の片瀬村の石橋建立発起帳には、「馬鞍結橋」と表記したとの記録が残されています。

     つまり、それだけ多くの最もらしい説の残されていることが愉快なのです。それは、この橋の存在がそれだけ重要視されていたからでもあろうし、それだけ問題にされなくてはならない何らかの理由があったという証明でもあるわけです。
     
     どこの土地にあっても、古くから言い継がれてきた内容と史実との間には差異があることでしょう。
     しかし、その土地土地の古老たちによって語り継がれた昔語りの中には、実際の史実を越えたところの庶民たちの夢のごとき真実がありそうな気がしてならないのです。

     あの明日香村でも、奈良時代から古老たちによって代々語り継がれてきた物語がヒントとなって、埋もれていた天皇陵発掘の手がかりとなったことも少なくはないはずです。
     きっとあの「馬喰橋」の言い伝えの中にも、史実を越えた真実が隠されているかも知れません。

     引地川の水の流れと同じように、この境川の水かさもいつもより多いような気がします。この川にいた鳥たちの姿も今日は見えないのです。
     そうかもう鳥たちの渡りの季節なのかも知れません。やがて、これからは冬を知らせる鳥たちに逢えることでしょう。
     
     この湘南に吹く風もすっかり秋の風になりました。

      
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     鵠沼海岸コースを自転車で散歩したのは9月24日のことでしたから、あれからもう15日が経過しています。
     このコースは自転車で走ればわずかに1時間30分の行程です。あの鵠沼海岸の景色も、すでに15日前の景色とは異なります。

     一昨日も逆コースで鵠沼海岸を走ってきましたが、あの片瀬西浜海岸の鉄骨を晒していた海の家は解体も終わり廃材が薄汚く積み上げられていました。
     鵠沼海岸では全日本ライフセービング選手権とやらが開催されていまして、多くの大学・高校・各地クラブのテントが張られ、大音声の拡声器が進行を告げていました。

     まだ台風15号は石垣島の付近にいると聞いていましたから、ここの海岸にまでは影響がないだろうと思われますが、いつもより大きい波にサーファ-たちが挑んでいました。

     でもやはり、あの波の大きさは台風の余波だと思います。
     ようやく、「湘南にも秋の風」の最終回を迎えることができました。

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    (註)
     
     この「湘南にも秋の風」には後になって写真を掲載しました。
     しかし、その写真は平成20年1月4日に撮影したもので、記事内容とは別の日時、別の季節のものであることをお断りしておきます。
     
     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 


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モモ

湘南にも秋の風    鵠沼海岸コースの⑧ (最終回) おめでとうございました。楽しく、情景を思い浮かべながら読ませていただきました。次の企画を楽しみにしています。
by モモ (2007-10-13 10:12) 

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