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湘南にも秋の風 【2】  [湘南にも秋の風]

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  湘南にも秋の風  
鵠沼海岸コースの②

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  •  地下道「海のちか道」から、辻堂西海岸(鵠沼海岸方面出口)に出ます。

     いつもは砂防の通路から出ると砂まじりの強い風で目を開けていられない。
     しかし、今日はめずらしく静かな青い海を見渡せるのでした。その代わりに地引網の漁師たちが、濡れた網を干すために埋め込んである5mほどの丸太に、カラスが群れたかって低い声でガアと鳴いています。

     例年ならば彼岸過ぎには暑い夏もひと段落して、あれほど賑わった海岸にも秋風が立つのです。ところが今日は人があふれているのです。 
     
    日曜日が彼岸の中日でしたから、今日が振り替え休日であることは分かっています。それにしても辻堂西海岸には、ふたたび夏が戻って来たようです。

     このあたりも台風9号の影響で、海岸の砂が流されたと報道されていましたが、それはもっと茅ヶ崎よりなのかも知れません。
     ほとんどが予約で行われているという地引網は今日は休みですが、スケボーの会場はたくさんの親子が急なスロープをたくみに上下しています。

     ふたたび134号線の海側を、江の島方面に向かって走り出します。そこでまた一端分かれた引地川と出会うのです。
     この川は最後は東に向かって流れるのですが、その引地川に架かる鵠沼橋を渡ります。渡り終わった右側には中華人民共和国の国歌の元となった、「義勇軍進行曲」の作曲者である聶耳(ニエアル)の記念公園があります。

      聶耳記念公園
     

     一昨年の2月、江の島の弁天橋のたもとで突然に50年前のことを思い出していました。それは私の小学校時代の修学旅行で、この江の島の二見館に泊まった日のことでした。
     その懐かしい二見館が、これも突然にモダンなスパと綺麗な鮨屋に変わっていたことが思い出す切っ掛けとなったのです。

     その日の帰りがけに、この聶耳記念公園のベンチに腰掛てあの戦争で死んだ父のことを思い出していたのです。あの日は凍てつくような如月の寒気に耐えながら、あたりがすっかり暗くなるまでひとり佇んでいたことを思い出しています。
     その記念公園を回り込むようにして、鵠沼海浜公園に入ります。

     黒松に覆われた入口から公園に入ると、遊具のある児童公園となっています。ここでも多くの若いお母さんと幼い子どもたちが、歓声を上げて遊具で遊び駆け回っていたのです。
     ここだけを見ていますと、日本の少子化が嘘のように思われる賑わいなのです。

     変わった爺さんが、あまり長い時間幼子を見つめていると不審に思われます。私は公園を大回りして引地川の河口に出ます。この高台に立ちますと海はいっきに広がって見えます。

     砂浜に押寄せる白い波と潮騒までが聞こえてきます。ここまで来るとなぜかワクワクして、思わず自転車を停めてしばらく放心しているのです。
     波と戯れているサーファーの彼方には、湘南のペンダントのごとき緑の江の島が浮かんでいます。でも真夏の濃い緑とは、「目にはさやか」ではありませんが少し変化して見えているのです。

     それは海水浴客で埋め尽くされていた海が、今日はサーファーとビーチバレーの人たちに乗っ取られているからでしょうか。
     それとも少し前まで賑わっていた海の家が、電気と水道の配管だけを無惨に晒しているからでしょうか。

     この湘南に来て秋の訪れを一番に感じさせるのは、海の家が撤去される時のあの釘を抜き板が剥がされる音を聞いた時です。それはあれほど楽しみだった祭りが、あっという間に終わってしまった時の寂しさに似ているからです。

     ビーチバレーに興じている真っ黒に日焼けした若者たちは、もう明日は学び舎に戻っていることでしょう。

     鳩を手にした「平和像」の周辺で、行く夏の海を楽しむ人たちがいます。新江の島水族館の周辺で遊ぶ人たちもいます。私は前々から、この二手に分かれた人たちの間にはなぜか微妙に異なるものを感じていました。
     でもまだ、こんなところが違うのですと明確に説名できるほどのことでもないのです。

     私の愛犬チワワが、モゾモゾと動き出すころには「太陽の広場」に着きます。この弓なりになった鵠沼海岸と片瀬海岸は、海に向かってゆるいスロープの階段になっています。
     私が微笑ましいのは、そのコンクリートのスロープにはまるでメジャーで計ったように若いカップルが等間隔に腰掛けているからです。

     この海岸も犬を散歩させる人が多いのです。特に夕陽の美しい時間になりますと、まるで犬の品評会となります。我が家の愛犬は前籠で静かにしているのですが、この「海風のテラス」まで来ると突然に前籠の犬用バックから立ち上がるのです。

     このチワワは犬のくせに人見知りなのです、散歩も嫌いなのです。でもここの木製のテラスを一周することだけは、彼女の唯一の散歩になっているのです。

     3人組みの女学生が、「かわいい」と私のチワワの周りにしゃがみ込みます。

 


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