「日暮れて道通し」
「日暮れて道通し」
令和3年3月19日(金)
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ここには彫りかけのアカマツ・ヒバ・ケヤキ・スギが並べてある。6年前に大病を患った時に「100体の御蔭地蔵を彫る」と願掛けをした。こうして並べてみていると、なんと6年前からいまだにここにいるお地蔵さんもいる。
じじいの御蔭地蔵は「もう打ち捨てられ焼かれてしまうような木っ端に、もう1度だけ命を吹き込みたい」と彫っている。そのような木っ端だから傷もあるし・ひび割れもあるし・節くれもある。それらをなんとか補修しながら彫ってはいるが、どうしてもうまくいかずにいまだにじじいの手元から離れられずにいる地蔵さんもいる。
彫り出せば1体2か月くらいで完成する地蔵さんもいる。だが6年彫っても地蔵さんに責任があるわけでもないのに、いまだにじじいの手元から離れらずにいる地蔵さんもあった。だがじじいには無傷で綺麗に仕上がった地蔵さんもいいけれども、彫っては失敗し欠けては彫り直したお地蔵さんも愛おしいと思っている。
地蔵さんを彫っていると、かつての教え子たちの顔が思い出される。いい子もいれば反抗的な子もいる。やさしい子もいればいじめっ子もいた。親のない子もいれば経済的に苦しい家庭の子もいた。それら生徒の数だけ、それぞれの暮らしと環境と個性があった。でもじじいはすべての生徒が可愛くてならなかった。
6年間で70数体の御蔭地蔵を彫って、それぞれの教え子たちのご家庭にお届けできた。目標の100体まで彫り上げることができるかどうかはわからないが、今日もひと彫りひと彫り教え子の顔を思い浮かべながら彫っている。