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「最後の写真」



  「最後の写真」 

        令和4年8月12日(金) 
                                
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  • じじいは過去を隠蔽していた。犯罪歴があるわけでもないが、敢えて恥ずかしい過去を世間様に晒す必要もないと思っていたからである。

    だが、このところ毎年終戦記念日が近くなると、年のせいか戦争のことが頻りに思い出されるのである。それも戦争の酷さではなく、幼子のじじいが「戦争で何を見て感じたか」を書き残しておこうと思っただけである。

    この写真の右端が父である。2番目が当時3歳のじじいである。久しぶりに都内に嫁入りした父の妹たちが帰省した夏の日のことだ。もう戦況もかんばしくはなかったが、この写真はなんとも幸せそうで、一瞬戦時下であることを忘れさせるようである。

    この後父は3度目の召集で戦地に向かった。じじいは見送る駅頭で父にすがりついた。そして2年後の8月15日の終戦の玉音放送が終わった日の午後に、前触れもなく役場の吏員が父の戦死公報を届けに来た。公報には「〇越〇雄中部太平洋方面にて戦死」とあった。

    なんと父は、この写真を撮ってから間もなく(2年前)して、どこだか判らない中部太平洋方面の海の藻屑となっていたのである。

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