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「炎天下蟻一匹の白い道」



  「炎天下蟻一匹の白い道」 

        令和4年8月11日(木) 
                                 
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  • おそらく、この句の作者を知っている人はいないであろう。なぜならじじいの遠縁で、あまり人柄のよくない因業な人物だったからできたら会いたくない人であった。

    それなのに、その人の句集の中で、この一句だけが70年経っても忘れられないのである。それは太陽がジリジリ照りつける学校帰りの無舗装の田舎道でのできごとだった。どこの子どもが落としたものか、泥道に大きな飴玉が夏の太陽で溶け出していた。

    戦後の食糧難は甘いものなんて口にはできなかった。飴玉を口にできる子どもなんて金持ちの家の子だけだった。だからといって羨ましいとも思わなかった。羨ましくはないが飴玉を食べたかった。

    じじいは炎天下の道にしゃがみ込んで、この飴玉をなんとか食べられないかと思案していた。木の枝を手折ってなんとか飴玉をすくい上げられないかとむなしく試みた。その時明るい笑い声がして2人の女の子が近づいて来たから、何事もなかった顔をして立ち上がった。

    振り返ると、炎天下の白い道に陽炎の立つのが見えた。

      ・・・・・

    ※目眩がするような陽射しの中を買い物に出た。藤沢にももう無舗装の道はなく、仕方なく空を見上げたらあの炎天下の句がよみがえった。

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