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游「桜さがし」 [「游」シリーズ (2012)]

 

  游「桜さがし」
         
                      
 
平成24年4月1日(日)

                               
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  • 引退後には、あれほど歩いていたはずの湘南地域や藤沢を、心臓を患ってからはほとんど歩くことがなくなった。

    桜の季節になると、あの吉田兼好が「徒然草」で書いているように、まだ咲かぬ桜を求めて藤沢各地をさ迷った。まだ固い蕾が日ごとに緩んでくるのを今か今かと待ち、1輪咲いた桜を写真に撮ってブログに公開したり、咲けば咲いたであっちにふらふらこっちにふらふらと連日カメラを片手に歩き回り、散りはじめた桜に過ぎゆく春を惜しみ、散り敷いた花びらをまで未練がましく追い求めたものであった。

    昨日(3月31日)のニュースでは、靖国神社の標本木のソメイヨシノが5~6輪咲いたとかで、今年の「開花」が宣言された。6年前までは市ヶ谷の勤め先まで通勤していたので、この季節になると毎年の仕事帰りには靖国神社まで遠回りして帰ったものであった。

    土曜日ともなれば夕方まで時間をつぶして、靖国神社から千鳥ヶ淵の夜桜を観に出かけたこともあった。時には酒も飲まずに、中部太平洋方面で戦死した父を偲んで靖国の本殿に額づき、千鳥ヶ淵戦没者墓苑まで出かけたこともあった。桜の季節に靖国神社に行きたくなるというのにも、もしかしたら父が最期の戦地に向かったのが、桜の季節であったとの思い込みがあったからかも知れない。

    勤務先の大学の卒業式や入学式が武道館で開催されていたから、毎年のどちらかが満開の桜吹雪であった。それにしてもどうして桜は、ああもお城と似合うのであろう。去年妻と行った弘前城の桜も、写真や連日観ているテレビでも小田原城でも、そのどこでも城に咲く桜は美しいのである。

    いや、あの月がエジプトのピラミッドやギリシャ・イタリアの古跡や、アフリカの砂漠などのどこにでも似合うように、桜もお城とだけに似合うのではないのかも知れない。しかし、日本の城には桜がよく似合う。そういえば太宰治の「富士には月見草がよく似合う」と書いてあるのを思い出していた。

    31日の桜開花宣言の日から今日で4日が過ぎている。ブログは「桜さがし」のタイトルなのに、これでは詐欺だと自分でも思っている。昨日は死傷者も出たという
    「爆弾台風」であった。その「台風一過?」の良い天気なのに、今日もパソコンの前にいて「買い物に行くわよ」という妻の声をビクビクしながら待っていた。       

    「今日はヨーカ堂に行きますから・・・」というので車を出した。買い物が済んで駐車場に戻ろうとすると、「私は薬屋さんに寄っていくから・・・」というので、私だけ大荷物を持って駐車場に向かった。

        P1120520.jpg

    妻を待つ間、立体駐車場のブラインドの隙間から何気なく外を見ていた。妻はなかなか戻らないので待ちくたびれて車から降りた。そこは駐車場の建物の陰でもあったから、あまり陽当たりはよくないようであった。

    まさかと思ったが、そこに一枝だけにひっそり咲き始めた桜があった。

    我が家のマンションのドアを開けるとお隣さんの桜が見える。そこからは近くの公園の桜も見える。このヨーカ堂に向かう車中からでも、数日もすると見頃を迎える藤沢市役所の桜も見える。しかし、この駐車場の5cmの隙間から見えた桜が、今年1番の桜ではないかと思えるほどの衝撃があった。

        ・  ・  ・

    駐車場の桜を見ての翌日であったろうか、白旗神社の宮司が「今年は伊勢山公園にある慰霊碑慰霊祭を斎行したい」と話していたのを思い出した。この公園は何度か訪れて忠魂碑のあることも知っていた。昔は桜の名所だと聞いていたが、あまり手入れのされていない淋しい公園だったという記憶しかなかった。

    そんな公園を目指したのは、タイトル「桜さがし」の言い訳のためにも、その伊勢山公園に行ってみるしかあるまいと思ったのだろう。

    我が家を出て数百メートル北に向かい、そこの角を東に折れて緩い坂道を下ると、このところ私のブログでも何度か取り上げている「我がすむ里」の作者である、「史跡 小川泰堂居住笑宿庵」碑の前に出る。

              P1120527.jpg

    だが今日は、小川泰堂翁のことに触れるつもりはない。このままこの坂を下り藤沢厚木線に出て、そこを左に曲がれば伊勢山公園方面となる。ところが、この碑の前を右に折れた。

    ここをゆるゆる上れば藤沢小学校の裏側に出て、そこを左に回ってゆけば、しばらく訪れる人もない古い墓地群があり、そこを下れば小さな神社が祀られていることは知っていた。

    その途中の民家の庭桜が、誰に見られることもなく寂しげに満開の時を待っているのであった。

        P1120529.jpg

    見も知らぬ墓地に入り込み墓碑銘を確かめてみた。ここしばらくは身内の人の訪れる気配もないのに、なぜか手入れをする人でもあるのだろう、さほど荒れ果てているとも見えないのである。ただ人の気配がないのである。

    小さな古びた神社名も確かめてはみたが、数日もするとその記憶もない。ここも人がお参りする気配はないが、やはり荒れ果てているともみえない。突然に飛び立つ鳥の羽音に驚かされて、すこし捻じ曲がった石段を用心深く下った。その先に小さく見えた遊行寺は、どうやらまだ桜は咲いていないだろうと決めつけた。

    坂を下り終えて藤沢厚木線に出て左に折れた。いつもなら寄り込むであろう常立寺の寺門は、ちょっと覗いただけで通り過ぎた。少し歩いたところであまり訪れることのない荘厳寺に寄り込んだ。

    このピンク色の枝垂桜が目に留まったからであった。

             P1120530.jpg

    ここは白旗神社と縁の深い寺であることは最近になって知ったことである。いつもなら、この寺の由緒でも書いてみたいところであるが、それもしないでまた藤沢厚木道路を北に急いだ。 

    (参考) 荘厳寺は、高野山真言宗の寺。
    1184年(元暦元年)、覚憲僧都により創建された。1235年(嘉禎元年)、覚盛により中興再建されている。もともとは、常光寺に(ママ)西の妙善寺の旧地の山下にあったが、元文年間(1736~1741年)に火災に遭い、1747年(延亭4年)、白旗神社境内に本堂が建てられ、白旗神社の別当寺となっていた。明治の神仏分離によって、1875年(明治8年)に現在地に移されている。本尊の不動明王は運慶作と伝えられ、源義経の位牌があることで知られている。(資料:「鎌倉手帳『寺社散策』」より引用)

    急ぐこともないのに急いだ。

    どうやら「桜さがし」だというのに、あまり桜に興味がないようである。まるで他人事のように書いているが、それだけ今年の桜に興味がないということだろう。あの西行が、「願はくは花のもとにて春死なむその如月の望月の頃」と詠んだのに憧れていたはずなのに、これはいったいどうしたことだろう。

    急いだ。

    急いだ先に伊勢山公園が見えてきた。この伊勢山が今日出かけてきた目的地であると書いた。まだ、わずかにしか桜は咲いてはいない。ここはこのあたりの桜の名所だと聞いたことがある。しかし、今では竹の林に覆われて手入れもされずに樹木が覆いかぶさり、桜の名所と呼ばれたのは今は昔のことである。
            

        P1120533.jpg

    ここから伊勢山を仰いで、よく整備されている階段を上りはじめた。この藤沢市に移り住んでからも、何度か訪れてはいたがほとんど記憶はない。

    では、なんのために伊勢山公園への道を急いだのかということになる。パソコンで検索してみると「公園」というサイトがあって、下記のような公園紹介が書かれてあった。

    伊勢山緑地(通称 伊勢山公園)は、藤沢4丁目にある公園です。昔ここに伊勢神宮が祀られてあったので伊勢山と呼ばれるようになったと言われています。1923年(大正12年)関東大震災の後、白旗神社などにあった戦没者慰霊碑がここに移され500本の桜を記念植樹、1927年(昭和2年)2月21日竣工式が行なわれたのが伊勢山公園のはじめです。1951年(昭和26年)に市立公園になりました。
    市立公園 公園番号1 供用開始1951年(昭和26年)5月20日 面積0.87ha

             P1120534.jpg

    ここで興味があるには、「
    1923年(大正12年)関東大震災の後、白旗神社などにあった戦没者慰霊碑がここに移され500本の桜を記念植樹、1927年(昭和2年)2月21日竣工式が行なわれたのが伊勢山公園のはじめです」とある部分である。

    喘ぎながら階段の中ほどまで上ると、わずかばかりほころびた桜が数輪見えた。このあたりの高い木々が伐採されて、以前よりは陽当たりがよくなったからであるらしい。

    見上げると、その先の階段や左右の植え込みにも人の手が入っているらしいのが感じられた。

    よく見ると古い桜樹の手入れもなされ、朽ちた桜の根元には最近移植されたと思われる若木もあった。まだ、老いた桜木に寄生木状の枝のかたまりがあって痛々しいが、それでも伊勢山公園には「桜の名所」を復活させようとする気配が感じられた。
             

             P1120547.jpg  

    この記事のタイトルは「桜さがし」だから、今回は伊勢山の慰霊碑のことは書かないことにした。それでもソメイヨシノが咲き始め、小さな河津桜がほぼ満開になった「伊勢山山頂の4基の慰霊碑」の写真を撮った。

    このことについては、やがて「伊勢山公園の慰霊碑」として書いてみたいとは思っている。

        ・  ・  ・

    いよいよ「桜さがし」のタイトルでは詐欺だとの思いが強くなった。そこで最後の言い訳として、三越日本橋店で開催された「春の院展」の帰りに立ち寄った「千鳥が淵の桜」を紹介して終わることにしようとした。


        P1120553.jpg  

    これでなんとか、「桜さがし」の記事を終わることにしたのだが、今朝(4月22日)になって近所にお住いの享子さんという女性から、次のようなメールが舞い込んだ。

          ・  ・  ・

    先生、ありがとうございます。 
    先ほど、ブログを少し拝見しました。
    先生、ブログまで使いこなすとは・・さすがですね!
    びっくりしました。

    桜の記事を拝見しました。
    私も今年は、弥栄と一緒に桜を沢山探しました。

    昨日は遊行寺へ。
    遊行寺の八重桜も、とても見事でした。
    今日、明日が満開ではないでしょうか。

    明日は午前中は雨が降らないようなので、よかったら行ってみてください。

    今度、じっくり、先生のブログにお邪魔させてください。
    そしていつか、歌舞伎に連れて行ってくださいね。

    それでは、失礼致します。

        ・  ・  ・

    以前、「遊行寺残りの桜」のタイトルで記事を書いたことを思い出した。ところが、翌日の今朝(23日)は朝から雨が降っている。それに午後からは、大学の恩師であり仲人でもあった先生の「偲ぶ会」の打ち合わせで、この雨の中を新宿まで出かけなくてはならなくなった。

    そうなると、なんとなく「遊行寺残りの桜」の一節を引用しておかねばならなくなった。

        ・  ・  ・
      

    四十八段のいろは坂を上りつめると、ここには残り咲きの牡丹桜が濃い緋色で迎えてくれる。

    卯月も末になると、本堂はイチョウとさくらによって大屋根が隠される。 
    カメラを持った参拝者は、ほんの数えるほどしかいない。
    ここには、なにがなんでも観光客を呼び入れようとする寺の強欲さが感じられない静寂さがあった。

    ここは「修行道場」なのだ。

        P1100887.jpg

    親娘連れが鳩に餌を投げている。
    芽吹いたイチョウの枝から、小鳥のさえずりが聞こえた。
    長閑とは、こんな陽気の中にあったのかとベンチに腰かける。

    いつものことだから、チワワは散歩バッグから顔をのぞかせる。
    餌さやりをしていた女の子が、ちょこちょこと近づいて手を伸ばす。
    そろそろ外に出ようとしていたチワワが、のぞかせた顔をまた引っ込める。

    バッグから出したチワワを膝に乗せると、少女はやさしく撫ぜている。
    そよ風が春を運んで、無心の乙女の亜麻色の髪を揺らしていた。
    気だるさは、心の慰められる時の流れに漂うものなのだろうか・・・。

        ・  ・  ・

    とあったので、これでなんとか「享子さんからのメール」へのお返しになるかと思った。ところがよく見ると、この記事には忘れていたコメントの書入れのあることに気がついた。

    私はブログに書くだけで、ほとんど寄せられたコメントを読んだことがないものだから、またこんな失礼を重ねてしまった。そこで、その失礼のお詫びの気持ちを込めて、その「往復コメント」を掲載させていただきことで、今度こそ「桜さがし」の記事を終わることにした。

          ・  ・  ・  

    はじめまして すみません、私はフリーでライターをしている者ですが、ただいま藤沢の桜の名所を探しています。
    「はまれぽ.com」というサイトで3月末掲載の湘南エリアの桜の名所の記事を担当することになり、遊行寺をその一つに予定しておりますが、桜の写真がなくて困っています。
    そこでお願いがございまして、こちらのブログの1枚目~3枚目のお写真を拝借することはできませんでしょうか。若干サイズが小さいようですので元画像をストレージか何かの方法で頂戴する御厄介をおかけしてしまい心苦しいのですが…。
    余談ですが、常立寺のしだれ梅はちょうど昨日龍口寺から片瀬山公園に上り迷ってしまったあげく、行かれなかったので、ありがたく拝見しました!31日(土)に私が担当しました龍口寺の五重塔の記事が掲載されます。by izayoi (2012-03-23 11:40)
       

    私ごときの拙いブログにご訪問くださり、ありがとうございます。
    この時期の遊行寺の残り咲きの桜よりも、染井吉野の咲く頃やいろは坂のボタン桜は、それはそれは見事なものです。ついでに申せば、大庭城址公園の桜(私のブログにも載せてあります)も見事です。
    ただし、写真のことですが、お使い下さるのは結構ですが、原画像を送信する方法は分かりませんのでお許しください。また「31日(土)に私が担当しました龍口寺の五重塔の記事が掲載されます」とありますが、残念ながら、それを拝見する方法が見つかりません。by ムーミンパパ(2012-03-26 14:56)

    コメントを頂戴していたのを気づかずご連絡が遅くなり申し訳ありませんでした。
    先日遊行寺さんに参りましたが総門が工事中でした。もしできましたら是非1枚目の総門の写真を拝借させていただけますと大変ありがく、助かります。
    サイズはこちらからのダウンロードでやってみます。写真のキャプションは「ムーミンパパさんからのご提供」という感じでもよろしいでしょうか。(お借りする場合ブログ名やイニシャルをとおっしゃるかたが多いようです・・・)
    五重塔の記事につきましても不案内ですみません。http://hamarepo.com/story.php?story_id=948
    こちらのURLでご覧いただけるかと存じます。記事的には再建の部材の話しなどまで追究できず不満足な出来なのですが;by izayoi (2012-03-29 03:24)

    度々の書き込みお赦しくださいませ。お写真ですが、やはりブログアップ時のサイズがどうしても小さいようでした。ストレージの方法をご説明しお手間をいただくのも心苦しく、また〆切りも迫ってしまいましたゆえ、こちらからお願いを申しあげたにも関わらず恐縮ではざいますが、今回は難しいようでございました。
    他の記事の素晴らしいお写真も拝見し、また藤沢の情報として大変参考にさせていただいております。ありがとうございます。またお願いさせていただくこともあるかもしれません。何卒よろしくお願い申し上げます。この度はお騒がせし誠に申し訳ございませんでした。

    (註)この記事は、まだ書きかけのものです。





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