昨日の「日没」
昨日の「日没」
令和3年3月16日(火)
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あまりに綺麗な夕焼け富士に見とれて動けなかった。あまりに綺麗な夕焼け富士だからなんだか知らないが悲しくなった。
詩人金子光春氏の息子さんに二度目の召集令状が届いた。その息子さんは病弱だったという。
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「富士」
重箱のように
せまっくるしいこの日本。
すみからすみまで みみっちく俺たちは数えあげられているのだ。
そして、失礼千万にも
俺たちを召集しやがるんだ。
戸籍簿よ。早く焼けてしまえ。
誰も。俺の息子をおぼえてるな。
息子よ。
この手のひらにもみこまれていろ。
帽子のうらへ一時、消えていろ。
父と母とは、裾野(すその)の宿で
一晩じゅう、そのことを話した。
裾野の枯林をぬらして
小枝をピシピシ折るような音を立てて
夜どおし、雨がふっていた。
息子よ。ずぶぬれになったお前が
重たい銃をひきずりながら、あえぎながら自失したようにあるいている。それはどこだ?
どこだかわからない。が、そのお前を
父と母とがあてどなくさがしに出る
そんな夢ばかりのいやな一夜が長い、不安な夜がやっと明ける。
雨はやんでいる。息子のいないうつろな空に
なんだ。くそおもしろくもない洗いざらした浴衣(ゆかた)のような
2021-03-23 11:32
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